マクドナルドの分布を図化
以前に栃木県のカフェをGISで図化しましたが、もう少し規模を大きくして、全国のマクドナルドだったらどうなるかとチャレンジしてみました。単純なプロットのほかに最近問題になっている?ニュースをもとに考えてみました。
▼GoogleマップAPIで栃木県のカフェを検索
発端として
この記事を書いている日から一か月ほど前になりますが、Yahooニュースで「なぜ解消されない? 渋滞の原因「ドライブスルー行列」 道路のはみ出しは法律的に問題なし?」(2021年10月10日)という記事がありました。
要約するとマクドナルドのドライブスルーを待つ車が道路にはみ出して渋滞がおきていること、また、コロナ禍によりドライブスルーの利用頻度が増加していることが書かれています。後半はマクドナルド以外の商業施設についても触れられています。
確かに近所にこれに相当する店舗があります。私はドライブスルーがあまり好きではないので(アイドリングをしたまま待つことが精神的に苦痛)、ほとんど利用したことがないです。車のときは駐車場に止めてカウンターで購入することが多いです。
それどころか、今年の夏にモバイルオーダーというものを使ってみたのですが、これが一番早くて便利だと思いますがいかがでしょうか。コロナ禍で車から降りたくないという理由もあると思いますが、これを使いこなせば、渋滞でまっているより早いような気がします。
ということで、この渋滞しそうな店舗ってどれくらいあるのか?という疑問が。なんとなくやってみました。
よく話題になるデータも参考に
マクドナルドに限った話ではありませんが、よく〇〇県は△△の消費が多いとか、〇〇県は△△の店舗数が少ないとかが話題になります。それらをすでに地図データかしている『都道府県別統計とランキングで見る県民性』というページがあって、ファーストフードだけでなく、様々な統計データの都道府県ランキングと地図をみることができます。これだけでも十分参考になるのですが、都道府県別の店舗よりも「どこに分布(立地)しているのかを見てみたい」というのが今回の目標としてやってみたいと思います。
ちなみに最も店舗数が多いのは予想通り東京都ですが、人口10万人あたりの店舗数は京都府が一位だそうです。
データ収集方法
まずは店舗リストをどのように入手したらよいか。公式ホームページにはGoogleマップ上にマークがでるものしかなく、表になっているものは存在しないようです。かろうじてIR情報のところに店舗数の項目があり、2021年9月末で2,932店舗あるようです。
そうなると別の入手方法になりますが、2つの方法をやってみました。
まずはiタウンページ。キーワードに「マクドナルド」、エリアに「東京都」のように入力し、データをExcelにコピペ。これを47都道府県で実施します。データには店舗以外(例えば本社や工場)も含まれるので、それらを除去します。結果として2,850店舗程度ありました。
次にナビタイム。こちらもタウンページとほぼ同様の方法でデータを集計します。検索結果として「マクドナルド」のカテゴリーがあるようで、かなりきれいなデータを収集できました。結果として2,933店舗ありました。上記の公式ページと比較しても1店舗しか差がなく、かなり精度は高そうです。ということでこちらを採用しました。
ナビタイムで収集したデータ(店舗名と住所のリスト)に緯度・経度を付与します。アドレスマッチングとYahooジオコーダを試しましたが、それほど変わらなかったので、Yahooジオコーダのものを使用しました。
QGISで図化
早速図化してみます。QGISについてはいつもの本をご参考に。
単純にプロット
予想通りの分布でしょう。マクドナルドの場所で鉄道や高速道路の路線が描けそうです。それにしても北海道の稚内や沖縄県の石垣にも店舗があるのは初めてしりました。流石は全国展開!
出典:「国土数値情報(行政区域データ)」(国土交通省)(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-N03-v3_0.html)を加工して作成
ヒートマップ版
QGISなら簡単にできるので。以前の記事を参照ください。
▼QGISでのヒートマップ作成
出典:「国土数値情報(行政区域データ)」(国土交通省)(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-N03-v3_0.html)を加工して作成
渋滞しそうな店舗を抽出
どうやって郊外の店舗を抽出しようかと考えたのですが、駅前じゃなければいいかと。
そこで以前にも使用した駅データを使用し、駅から500mのバッファを発生させ、バッファと交わる店舗は対象から外します。
アドレスマッチングも100%一致しない(今回エラーは無し)ので、実際の店舗とずれている箇所も多くありますが、誤差の範囲ということで。
出典(背景地図):「地理院タイル」(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)、出所「Shoreline data is derived from: United States. National Imagery and Mapping Agency. “Vector Map Level 0 (VMAP0).” Bethesda, MD: Denver, CO: The Agency; USGS Information Services, 1997.」
データで見る渋滞しそうな店舗(というより都道府県)
駅から500m圏外のデータを見てます。みるだけなので、GISのファイル(DBF)を直接Excelで開き、そのまま加工しました。結果は・・・。
都道府県 | 500m以内 (a) | 500m超 (b) | 合計 (c=a+b) | 500m以内割合 (d=a/c) | 500m超割合 (e=b/c) |
北海道 | 26 | 64 | 90 | 28.9% | 71.1% |
青森県 | 2 | 20 | 22 | 9.1% | 90.9% |
岩手県 | 2 | 12 | 14 | 14.3% | 85.7% |
宮城県 | 10 | 35 | 45 | 22.2% | 77.8% |
秋田県 | 2 | 13 | 15 | 13.3% | 86.7% |
山形県 | 3 | 15 | 18 | 16.7% | 83.3% |
福島県 | 7 | 26 | 33 | 21.2% | 78.8% |
茨城県 | 9 | 71 | 80 | 11.3% | 88.8% |
栃木県 | 6 | 38 | 44 | 13.6% | 86.4% |
群馬県 | 6 | 36 | 42 | 14.3% | 85.7% |
埼玉県 | 64 | 121 | 185 | 34.6% | 65.4% |
千葉県 | 70 | 85 | 155 | 45.2% | 54.8% |
東京都 | 254 | 98 | 352 | 72.2% | 27.8% |
神奈川県 | 119 | 109 | 228 | 52.2% | 47.8% |
新潟県 | 2 | 35 | 37 | 5.4% | 94.6% |
富山県 | 5 | 21 | 26 | 19.2% | 80.8% |
石川県 | 3 | 25 | 28 | 10.7% | 89.3% |
福井県 | 5 | 15 | 20 | 25.0% | 75.0% |
山梨県 | 1 | 19 | 20 | 5.0% | 95.0% |
長野県 | 5 | 34 | 39 | 12.8% | 87.2% |
岐阜県 | 4 | 39 | 43 | 9.3% | 90.7% |
静岡県 | 22 | 69 | 91 | 24.2% | 75.8% |
愛知県 | 60 | 136 | 196 | 30.6% | 69.4% |
三重県 | 9 | 37 | 46 | 19.6% | 80.4% |
滋賀県 | 12 | 27 | 39 | 30.8% | 69.2% |
京都府 | 38 | 39 | 77 | 49.4% | 50.6% |
大阪府 | 126 | 116 | 242 | 52.1% | 47.9% |
兵庫県 | 66 | 77 | 143 | 46.2% | 53.8% |
奈良県 | 16 | 22 | 38 | 42.1% | 57.9% |
和歌山県 | 3 | 20 | 23 | 13.0% | 87.0% |
鳥取県 | 1 | 9 | 10 | 10.0% | 90.0% |
島根県 | 0 | 8 | 8 | 0.0% | 100.0% |
岡山県 | 6 | 29 | 35 | 17.1% | 82.9% |
広島県 | 17 | 36 | 53 | 32.1% | 67.9% |
山口県 | 6 | 21 | 27 | 22.2% | 77.8% |
徳島県 | 2 | 14 | 16 | 12.5% | 87.5% |
香川県 | 9 | 16 | 25 | 36.0% | 64.0% |
愛媛県 | 5 | 24 | 29 | 17.2% | 82.8% |
高知県 | 2 | 10 | 12 | 16.7% | 83.3% |
福岡県 | 34 | 62 | 96 | 35.4% | 64.6% |
佐賀県 | 2 | 17 | 19 | 10.5% | 89.5% |
長崎県 | 7 | 15 | 22 | 31.8% | 68.2% |
熊本県 | 9 | 28 | 37 | 24.3% | 75.7% |
大分県 | 2 | 23 | 25 | 8.0% | 92.0% |
宮崎県 | 6 | 12 | 18 | 33.3% | 66.7% |
鹿児島県 | 10 | 15 | 25 | 40.0% | 60.0% |
沖縄県 | 4 | 41 | 45 | 8.9% | 91.1% |
総計 | 1,079 | 1,854 | 2,933 | 36.8% | 63.2% |
東京都だけ突出して郊外店は少ないです。大阪や名古屋と比べても随分違います。やはりJR以外にも地下鉄や私鉄が発達しているからでしょうか。
一方で島根県は駅から500m以内にある店舗が一つもないという。県内に8店のみですのでちょっと見てみましょう。駐車場とドライブスルーの有無を確認してみたいと思います。ついでに整理した内容にある「パークアンドゴー」とはモバイルオーダーで頼んだ商品を駐車場まで持ってきてくれるサービスで2020年から始まっているようです。これは渋滞解消に一役買いそうです。
松江店
駐車場:〇
ドライブスルー:〇
モバイルオーダー:〇
パークアンドゴー:×
24時間営業:×
イオン松江店
駐車場:〇
ドライブスルー:×
モバイルオーダー:〇
パークアンドゴー:×
24時間営業:×
9号線松江店
駐車場:〇
ドライブスルー:〇
モバイルオーダー:〇
パークアンドゴー:×
24時間営業:〇
出雲ゆめタウン店
駐車場:〇
ドライブスルー:×
モバイルオーダー:〇
パークアンドゴー:×
24時間営業:×
出雲バイパス店
駐車場:〇
ドライブスルー:〇
モバイルオーダー:〇
パークアンドゴー:×
24時間営業:×
出雲渡橋店
駐車場:〇
ドライブスルー:〇
モバイルオーダー:×
パークアンドゴー:〇
24時間営業:〇
浜田ゆめタウン店
駐車場:〇
ドライブスルー:×
モバイルオーダー:〇
パークアンドゴー:×
24時間営業:×
益田店
駐車場:〇
ドライブスルー:〇
モバイルオーダー:〇
パークアンドゴー:〇
24時間営業:×
松江店は駅に近いようですが、駅前というわけではなさそうです。やはり8件とも駐車場がある店舗です。都市部の駅前やビルの1階にあるような店舗は存在しなさそうです。ほぼ自動車で来店する店舗でしょう。
ドライブスルーのない店舗もありますが、店舗名称からショッピングセンターなどの内部にある、おそらくフードコートの店舗でしょう。
おまけに市町村も
先ほどのランキングのページでは都道府県別のランキングがあるわけですが、今回の作業では分布を図化しています。つまり市区町村レベルのデータもありますので、自治体に店舗が集中している箇所も見てみましょう。
店舗数ランキング | 自治体 | 店舗数 |
1 | 八王子市 | 19 |
2 | 足立区 | 18 |
3 | 柏市 | 16 |
3 | 藤沢市 | 16 |
3 | 尼崎市 | 16 |
6 | 練馬区 | 15 |
6 | 西宮市 | 15 |
6 | 大分市 | 15 |
6 | 鹿児島市 | 15 |
10 | 宇都宮市 | 14 |
10 | 船橋市 | 14 |
10 | 世田谷区 | 14 |
10 | 府中市 | 14 |
10 | 横須賀市 | 14 |
10 | 姫路市 | 14 |
10 | 高松市 | 14 |
1位は八王子市で市内に19店舗もあります。柏市や藤沢市もベッドタウンでなんだかわかるような気がします。一方で鹿児島市や高松市は意外でした。
まとめ
今回はマクドナルドの店舗分布を図化してみました。当初の渋滞原因が解明したのかというとちょっと微妙・・・。なんだかんだ言って「柏市にマックがいっぱいあるよ!」という情報のほうが面白かったり。仕事ではないGISの使い方なんてこの程度のゆるさがよいのではと思いました。