人口メッシュを自分でつくる
国勢調査の人口メッシュはほぼ全域をカバーしていますが、以前は250mメッシュなど細かいメッシュは都市部に限られ、統計データの種類も限定的でした。今回は小地域(人口)の統計データをメッシュ統計へ反映させてみました。その過程においてPLATEAU(プラトー)のデータを使います。そして、実際のデータと比較してみます。
参照した情報
自分の知りうる方法でポリゴンとポリゴンを重ね合わせて、按分比率で配分・・・のような考えが浮かびます。今までも似たようなことをしてきました。国勢調査についてはこちらで方法論が公開されています。これのまねごとをしてみようというわけです。
今回の作業では『メッシュ統計』(共立出版)も参考にしました。その名称の通りメッシュ統計だけを対象にした専門書です。大学生・大学院生向けの教科書だと思います。とても難しく、計算式はさっぱりわからないのですが、方法論のところは色々と参考にさせて貰いました。(国勢調査のメッシュデータ作成に関わる記載もあります。)
また、本に掲載のプログラム(R言語)はサポートページよりダウンロード可能です。このサポートページにライブラリとして他の言語による関数も公開されています。
緯度経度からメッシュ番号を求める関数などがあります。確かにこれを使えば、pythonでシェープファイルを読み込んで・・・といった処理を行うより早いのかも?知れません。これはまた別の機会に。
作成の方針
作成の方針を簡単にまとめてみました。あるメッシュ1区画に、2地域の接する箇所があります。このメッシュにどれだけの人口を配分・集計すればよいか考えてみます。
単純に面積按分で考えてます。
さきほど紹介した『メッシュ統計』では、按分比率のことを「貢献度」、メッシュの重なり具合のことを「包含」、貢献度により統計値を割り当てることを「面積割合同定」というそうです。勉強になりました。
実際に国勢調査のメッシュ作成における同定には手順(再掲)があるのですが、ここでは難しく考えず、以下の点について考えてみます。
単純に面積比率で同定すると、人の住んでいないメッシュ(以下の図では領域のほとんどが公園や学校)にも人口が多く配分されてしまいます。そこで住居を基準として同定を行います。これを住宅建物同定というそうです。
▲イラストは「ACイラスト」を使用しています
住宅建物同定を行うに当たり基準となるデータはあるのでしょうか。
今までに何度か使ってみた基盤地図情報に建物や建物の外周線というデータがあるのですが、このデータにはその建物が住宅か住宅以外かを判断する属性がありません。
ここでPLATEAU(プラトー)を使用してみます。これは国土交通省で作成している3D都市モデルのオープンデータです。まだ一部の都市のみになりますが今後全国展開していくそうです。
本来の使い方は建物の3D画像を表示するものですが、データに多くの属性(種類や高さなど)があるため、これを使用することにしました。
結果
ここでかなり吹っ飛ばしていますが(もうコードがぐちゃぐちゃなので)、できあがりだけ見てみます。特にXMLファイルの読み込みが大変でした・・・。
国勢調査のシェープファイルと自分でつくったものをQGISで重ね合わせて見てみました。
良さそうな箇所
重ね合わせた図の凡例は次の通りです。
- 赤色の線:メッシュ(250m)
- 青色の線:国勢調査(2020年)の小地域
- オレンジの線(図形):住宅
- 赤の数字(上段):国勢調査(2020年)メッシュの人口
- 緑の数値(下段):今回作成したメッシュの人口
まずは柏駅周辺です。数カ所を除けばだいたいよさそうです。
出典「令和2年国勢調査に関する地域メッシュ統計」(総務省)(https://www.stat.go.jp/data/mesh/r2_w.html)および「地理院タイル」(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)を加工して作成
松葉町付近。住宅が密集している箇所のほうが精度は高いようです。
出典「令和2年国勢調査に関する地域メッシュ統計」(総務省)(https://www.stat.go.jp/data/mesh/r2_w.html)および「地理院タイル」(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)を加工して作成
柏駅南部16号線沿い。住宅地と農地・森林が混ざっていますが、よさそうです。
出典「令和2年国勢調査に関する地域メッシュ統計」(総務省)(https://www.stat.go.jp/data/mesh/r2_w.html)および「地理院タイル」(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)を加工して作成
手賀付近。比較的農地が多い箇所です。国勢調査では0人の箇所にも配分されています。
出典「令和2年国勢調査に関する地域メッシュ統計」(総務省)(https://www.stat.go.jp/data/mesh/r2_w.html)および「地理院タイル」(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)を加工して作成
留意しなければならない箇所
当たり前ですが、柏市のデータのみ取り扱っているので、他の自治体と接触している箇所のメッシュは柏市の分しか算出できません。
出典「令和2年国勢調査に関する地域メッシュ統計」(総務省)(https://www.stat.go.jp/data/mesh/r2_w.html)および「地理院タイル」(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)を加工して作成
自分でつくって良かったと思う箇所
下総航空基地周辺。国勢調査では自衛隊基地内部のメッシュにも人口があるのですが、今回造ったものでは0人です。配分方法の違いだと思います。
出典「令和2年国勢調査に関する地域メッシュ統計」(総務省)(https://www.stat.go.jp/data/mesh/r2_w.html)および「地理院タイル」(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)を加工して作成
全く使い物にならない箇所
柏の葉周辺。PLATEAUの整備年の違いなのか、駅周辺にあるマンションのデータがほとんど無く、正しく人口配分できませんでした。こういうものなのか、今後整備されていくのか・・・。またの機会に。
出典「令和2年国勢調査に関する地域メッシュ統計」(総務省)(https://www.stat.go.jp/data/mesh/r2_w.html)および「地理院タイル」(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)を加工して作成
まとめ
今回はPLATEAUのデータを参考に、メッシュ統計をつくってみました。まだまだ課題はありますが、今までは面積按分により行ってきました。このようなオープンデータを使うことで、他の統計データからメッシュ統計をつくる際に応用できるのではないかと思います。
▽面積按分に関する記事です