移住について考える
ここ2ヶ月全く更新ができませんでした。仕事が忙しかったのですが、それ以上に大雪による影響が大きかったです。2020年末から雪ばかりで、積雪量も頻度も多く色々と生活にも支障がありました。
私は家庭の事情により首都圏から北日本へ移住したため、雪のほか、不便を強いられているのですが、ある本を読んで、私なりに、移住先の(子供の)医療費について考えてみました。
▼以前に「未来の地図帳」の図化をおこなってみました
こどもの医療費負担について考える
転居に伴いこどもの医療費(ここでは通院で支払う金額)が変わりました。自治体毎に違うことは承知していましたが、やはり負担額が増えるというのはうれしいことではありません。
他の自治体とかどうなっているのだろうと、ネットで検索していると「医療費負担で住むまちを決めてはいけない」という内容の記事があり、この記事が光文社『住みたいまちランキングの罠』の内容となっていましたので、私も早速読んでみました。
この本は保育、まちの安全、公共施設、マンションなど様々な視点から、「住みたいまちランキングが上位であっても不都合な点はある」と指摘しています。個人的には医療やゴミ問題、武蔵小杉についての内容が面白かったです。
一方で、指摘が多いため、「批判ばかりしてないで、解決策はどうなの?」という意見をお持ちの方には相性が悪いかも知れません。また、ランキングの方法に対しての考察はありますが、統計的に数値を使っての検証などはありません。
さて、こどもの医療費の話ですが、簡単に要約すると…
- 市区町村が「子育てしやすいまち」を目指し、対象年齢などの競争が激化している
- 実はこどもの医療費が最もかかるのは乳幼児で、小学生、中学生になるにつれ減るので、医療費助成の対象年齢が高い自治体を選ぶ必要は無い
- これで儲かるのは開業医であり、受診者のモラルハザードも広がる
- 医療に使う予算が増え、本来必要な部分への予算が不足する
というものです。
確かに年間数万円の医療費負担と、住宅ローンなどを比較すれば、こどもの医療費が無料だからといって住む基準にするなという主張もわかります。でも、これは都市部の話です。そもそもこの本の「住みたいまちランキング」は都市部の話であって地方のことではありません。
地方に移住した私にとって、こどもの医療費助成については、住む判断基準になるのではないかと思います。「鶏が先か卵が先か」とはちょっと違うかもしれませんが、「こどもの医療費が無料になるまちは、財政のあり方について考える必要がある」という著者の主張に対し、私見ではありますが「こどもの医療費が無料にならないまちは、すでに財政のあり方に問題がある」と思っています。
著者の主張を批判するつもりはありませんし、実際首都圏の自治体はそうなのかもしれません。しかし、地方はもう財政に余裕がなく、こういった施策すらできないのだと思います。そうなると、こどもの医療費に手厚いことをやっている自治体は豊かに見えてくるのです。
私の移住した自治体も、以前住んでいた自治体と比べると医療費が無料となる年齢が下がり、来年度から自己負担が発生する予定です。やはり、まちに元気がないんです…。
ではGISを使ってみてみましょう。ソフトはいつもどおりQGISを使用しています。
GISで図化
データは厚生労働省の『令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について』にあったものを使用しました。データというよりも資料(PDF)ですので、ちょっと苦労しました…。
本にも記載があり、この調査にもあるのですが、こどもの医療費助成については、都道府県ごとに決まっており、それを超えるものを各市町村が実施しています。(例えば「県では就学前まで助成ですが、うちの市はさらに15歳年度末まで助成しますよ」といった感じです)
まずは都道府県
図化の対象は通院における対象年齢とします。(=入院については対象としていません)また、自己負担の有無も図化していません。
都道府県ごとに細かい部分(第3子とか、乳幼児とか、非課税世帯とか)もありますが、図化はしていませんので、詳細は厚労省の各資料をご確認ください。
出典「令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について」(厚生労働省)及び国土数値情報「行政区画データ」(国土交通省)を加工して作成
もう一度言いますが、この図は助成の対象年齢を図化していますので、医療費が無料の都道府県もあれば、一部負担の都道府県もある点に注意してください。
ほとんどの都道府県が就学前までのようです。一方で福島、静岡、鳥取は手厚くやっているようです。
これを市区町村別にみると…
ここからが今回の主題です。早速見てみましょう。
出典「令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について」(厚生労働省)及び国土数値情報「行政区画データ」(国土交通省)を加工して作成
これで一目瞭然です。あれだけ真っ赤だった地図が、市区町村の独自の助成のおかげで随分緩和されたイメージです。
そして冒頭の私見でも述べましたが、手厚くやっていない市区町村の分布について考えなければなりません。特に北海道は厳しい状況がわかります。同じ地域に住むのであれば、こういった材料が判断基準になってくると思うのです。
ついでに、濃い緑色(20歳・22歳まで)の市区町村は3つありました。北海道南富良野町(22歳年度末まで・無料)、茨城県境町(20歳年度末まで・一部自己負担あり)、奈良県山添村(20歳年度末まで・一部自己負担あり)です。気になる方は各市区町村のホームページをご覧ください。22歳はかなり思い切った施策で凄いな…と思いました。
それともう一つ。地方でも緑が結構あります。これは過疎地域へ移住者を呼び込むための施策として力を入れている場合もあると思います。すでに若者が著しく少ないないため、医療費に予算を出せるのではないでしょうか。全都道府県は図化しませんでしたが、関東地方はもう少し細かく見てみようと思います。
市区町村レベルでは自己負担の有無も図化しました。(網掛けがわかりずらいのですが、少し暗くなっています。綺麗になっているところが無料ということになります。自己負担は年齢別に異なってくるので、詳細は市区町村のホームページでご確認ください。)市区町村名の表示では15歳未満の人口割合も表示しました。一部の都道府県ではラベルが消えている場合があるかもしれませんのでご了承ください。
東京都
出典「令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について」(厚生労働省)、国土数値情報「行政区画データ」(国土交通省)及び平成27年国勢調査「人口等基本集計」を加工して作成
奥多摩町は昔テレビでも見たことがありますが、若い世代を呼ぶためにいろいろな施策をやっていました。15歳以下の人口割合もかなり低いです。千代田区は人口自体が少ないと思います。西部はだいたい足並みがそろっている気がします。
神奈川県
出典「令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について」(厚生労働省)、国土数値情報「行政区画データ」(国土交通省)及び平成27年国勢調査「人口等基本集計」を加工して作成
神奈川県は「就学前まで・自己負担あり(4歳未満は自己負担なし)」なので、赤がないということは全市区町村が何らかの施策を行っています。ですが、人口も多いせいか思い切った市区町村は少ないようです。
埼玉県
出典「令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について」(厚生労働省)、国土数値情報「行政区画データ」(国土交通省)及び平成27年国勢調査「人口等基本集計」を加工して作成
こちらは都市部と山間部でハッキリと別れた感があります。埼玉県も「就学前まで・自己負担あり」ですが、一つも赤がありませんので、全市区町村頑張っているようです。また、自己負担はなく、無料です。
秩父方面は移住政策の一つと推測されます。一方で新座市と朝霞市は本でも少し紹介されているのですが、東京都付近として食らいついているようです。
千葉県
出典「令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について」(厚生労働省)、国土数値情報「行政区画データ」(国土交通省)及び平成27年国勢調査「人口等基本集計」を加工して作成
千葉県は「9歳年度末まで・自己負担あり」ですが、オレンジ色はないので、各市区町村頑張っているようです。また、全体的に自己負担が多いようです。
銚子方面の海側はやはり移住政策でしょうか。コロナ禍で千葉県への移住先は人気があるようですが、今後どう影響するでしょうか。
茨城県
出典「令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について」(厚生労働省)、国土数値情報「行政区画データ」(国土交通省)及び平成27年国勢調査「人口等基本集計」を加工して作成
茨城県は「12歳年度末まで・自己負担あり」ですが、オレンジは無いので、やはりどこの市区町村も頑張っているようです。大子町も移住政策には力を入れていたと思います。西部には先に述べた境町があります。
栃木県
出典「令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について」(厚生労働省)、国土数値情報「行政区画データ」(国土交通省)及び平成27年国勢調査「人口等基本集計」を加工して作成
栃木県は「12歳年度末まで・自己負担あり」ですが、オレンジ色はありませんので、どこの市区町村も頑張っているようです。やはり都市部と山間部ではっきり分かれています。宇都宮市周辺は宇都宮圏のベッドタウンとしての区別化でしょうか。
群馬県
関東地方ではここだけ随分違う色になりました。群馬県が「15歳年度末まで・無料」ですので、あえて市区町村がそれを超える施策をすることがないのだと思います。一方で南牧村と上野村は移住政策と推測されます。
まとめ
思い付き感がありながらも、目的がはっきりしていたため、図化の目的はほぼ達成できたかと思います。ただし、細かい区分の表現方法についてはまだまだ検討する必要があります。
最後に今回の図化とは直接関係はないのですが、子育てやまちづくりに関してとても良い本がありますので紹介します。同じ光文社で『子どもが増えた!~明石市 人口増・税収増の自治体経営(まちづくり)』というものです。
あるニュースで有名になった明石市長の話ですが、こどもに関する行政の並々ならぬ熱心さが伝わってきます。ぜひ読んでみてください。